「英語学習アドバイス」はじめました

私、うら若き乙女のころ(21歳)からおばさん(39歳)になるまでの18年間ものあいだ、英語教材を作る仕事をしてまいりました。ですので、友達に「ねぇ、どうやったら英語できるようになる?」と聞かれたことは数え切れず。

しかし、毎日毎日あまりにもたくさんの英語学習ネタに触れすぎていたためか、山のような情報がブルドーザーのようにガガガと口に向かって押し寄せて、つまってしまって出てこない。何から伝えたらいいのかわからなかったのです。目の前の人に。

しかし、転職して、英語教材を作りまくる仕事からちょっと離れて1年半。最近、英語学習といい感じに距離ができて、頭が整理されたような気がします。

先日、ママ友に「仕事で英語が必要になったから、アドバイスがほしい」と言われ、「あ、なんか今ならアドバイスできるかも、というかしてみたいかも」と思えたので、勝手に、個人的に、英語学習アドバイザーとしてデビューしました! それがけっこう楽しくて、もしかしたらだれかの役に立つかも、と思ったのでママ友Aさんに許可を得て、こちらでご紹介します。

【相談者Aさん】
30代、女性、小学生男子のママ。来年から美術館の学芸員として働くことが決まっている。2020を前に、外国人観光客も美術館を訪れることが予想されるので、対応できるように英語力を上げておきたい。

Aさんが英語を学ぶ目的

  1. 外国人が美術館に来た時にガイドできるようになりたい
  2. 来日した海外の美術館関係者をアテンドできるようになりたい
  3. アートワークショップを英語できるようになりたい
  4. 海外の美術館関係者からの英文メールに対応できるようになりたい

なるほど、状況は理解しました。なんか楽しそう。なんかちょっとうらやましい。さて、どんなアドバイスをすべきか見極めるため、私からAさんにここでいくつか質問をば。

●いまの英語レベルは?
初級。ハワイ旅行は単語とかフレーズ(go straightとかI canとか)で乗り切った。文法は忘れた

●英語学習歴を教えて?
高校生のときにN●VAに通ったが先生が怖くてすぐやめた
アメリカにホームステイ(高校1年、1カ月くらい)
大学卒業後、貧乏旅行でヨーロッパ大陸を横断

●どんな学習方法がいいなと思ってる?
家でオンラインで学ぶなどをイメージしている
本はあんまり好きじゃない
通学はあまりしたくない。時間がない
飽きっぽい

なるほど。ふむ、いい感じで情報が引き出せたのではないでしょうか。さぁ、いよいよ行きますよ、はじめての、英語学習アドバイス〜!

Advice 1
オリジナルの英文フレーズ集を作るべし

Aさんが英語を学ぶ目的の1〜3については、自分が言うセリフはある程度予想がつくはず。たとえば1なら、「常設展はこちらです」「特別展はこちらです」「写真は禁止です」など。2なら、自己紹介、自分の担当業務の紹介など。3は、ワークショップをリードする説明。なので、それらについては、あらかじめフレーズ集を作って覚えてしまうことをおすすめします。手順は以下のようなイメージ。

1.必要になりそうなセリフを日本語で書き出す
2.翻訳アプリを使うか英語ができる人に聞くなどして英訳し、「オリジナル英文フレーズ集」を作る
3.ロールプレイ形式で口に出して練習しておく
4.実際に業務が始まったら、「これ英語でなんて言うんだろう?」と困った経験をするたびにそのセリフを書き留めておき、あとで英訳してフレーズ集に加えていく。

これを繰り返すうちに、自分が言うべきセリフは英語ですらすら言えるようになるはず。手間はかかるけど。

★お役立ちツール★
Google翻訳→言わずと知れた翻訳アプリ
多言語音声翻訳アプリ ボイストラ→31言語に対応している無料の音声認識翻訳アプリ。フレーズの翻訳に使えるだけでなく、スマホに入れておけばガイドやアテンドのときに翻訳機として使える

Advice 2
アウトプットの場をつくるべし

Advice 1の「オリジナル英文フレーズ集」を覚えるのは「インプット」の作業ですが、必ず「アウトプット」の場をつくっておくことが大事。なぜなら、いつ使うかもわからないフレーズは覚える気にならないから。たとえ月に1回でも英語を話す機会をつくっておくことで、「今度使おう」という気持ちがわいて、インプットの効果が上がります。

というわけで、オンライン英会話が手軽でいいかな。レッスン開始時に講師に「私は来年から学芸員として働くから、そこで役立つフレーズを知りたい」とか「アートについて話したい」とか言えば、講師が合わせてくれるはずです。

★お役立ちツール★
オンライン英会話 ネイティブキャンプ→月額5,950円でレッスン受け放題、予約不要
*オンライン英会話はたくさんあって、どれも良さがあるので好みで選べばいいけれど、仕事があるママのように時間の制約が多い人には「予約なしでスキマ時間にすぐレッスンできる」というのが向いていると思うのでネイティブキャンプをチョイスしました。値段も手頃だし。

Advice 3
コンテンツベースド・ラーニングをするべし

Aさんの場合、英語を使うシチュエーションが「美術館に関する業務」とかなりはっきりしている。そんな場合はぜひ、「コンテンツベースド・ラーニング」をおすすめしたい。

コンテンツベースド・ラーニングとは、手短に言うと「自分が興味がある内容(=コンテンツ)の英文や音声を使う」学習方法。内容自体を楽しめるのでやる気が出るし、自分が使う頻度の高い単語やフレーズをどんぴしゃで無駄なく学べるのがいいところ。

Aさんの場合は、美術に関する英語素材を探すことになります。素材は以下の方法でいくらでも見つかるけれど、自分の英語レベルに合うもの、学習に使いやすいものを見つけるのがわりと難しい。素材探し、そして、素材を使ってどう学習すると効果的か、というあたりはアドバイザーの助けがあるといい部分かもしれません。

★英語素材の探し方★
●仕事で受け取った英文メール→仕事で英語を使うなら、これ以上どんぴしゃな教材はない! 難しい内容でもじっくり1カ月くらいかけて丁寧に読み込む
インターネット上の英文記事→美術関連の記事なら、たとえば、art article、art magazine、picasso、japanese paintingなどの単語で検索すると見つかる
Podcast→Podcastのアプリから、同じように英語の単語で検索して、興味を持てる番組を探す
●YouTube→同上。大学のアート関連レクチャーの動画なんかもあるようです
Netflix→Netflixは、音声の日英や字幕のありなしをスマホでも簡単に設定できるから英語の勉強にいい。「日本語音声×英語字幕」「英語音声×英語字幕」「英語音声×字幕なし」などいろいろ選べます。アート関連番組もあるだろうけど、好きな番組が一番!

Advice 4
文法もやってください

「文法は忘れた」と言うAさん。わかります。いろいろ忘れてます、私も。ただ、文法は文章の土台となる部分なので、やはり意識して強化したほうがいいかな。いまさら文法書を読み直すのもツライよねということで思い出したのが、「文法用語を使わずに、文法を身につけることができる」というシリーズ、『タテ×ヨコ』(アルク)。

実はこれは、仕事で紹介記事を書くことがあって中身をよく知ったのですが、いいと思います。本もアプリもあるのでそこは好みで。私は本、かな〜。Aさんにおすすめしたら、アプリをさっそくダウンロードしてました。

★お役立ちツール★
タテ×ヨコ(アプリ)
タテ×ヨコ(本)

Advice 5
英検2級を目指すといいかも

なにか目標があったほうがやる気が出るし、試験対策をする中で文法なども身につくし、なにより自分の英語力の伸びを客観的に把握できるということで、試験をひとつの目標にするのも悪くないと思います。

これもまた、仕事で英検対策本を担当して知ったことですが、英検ってけっこういい。リーディング、ライティング、リスニングの試験に面接がセットになっているので、試験対策が偏らず、結果として総合力が伸びるという印象がありました。

英文のテーマは、TOEICのようにビジネスシーンに特化しておらず、幅広い。日常会話、スポーツ、健康、自然、IT、など読んで「へぇ〜」と思えるようなものも多いです。Aさんは3級はお持ちということだったので、2級をおすすめしました。そう簡単ではないけれど、合格すれば職場でも「英語できます」という証明にできるし。

★英検のウェブサイト★
英検2級の情報と過去問

……というわけで、だいぶ長くなってしまいました。ひとつひとつのAdviceについて、それぞれまだまだ言いたいことはあるわけですが、とりあえず、1時間ほどで、思いついたことを全部伝える方式で1回目を終えました。全部やることはできないと思うけれど、役立ちそうとか面白そうと感じたものからやってみてもらえればと思っています。

この英語学習アドバイスまつりのあとは、Aさん持ち込みのワインでママ友飲み会がスタート。そっちのほうがずっと長くなり、結局夜の10時半まで語り合ってしまいました。楽しかった。