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「英語学習こじらせ系」への英語学習アドバイス

前回と間を開けず、「英語学習アドバイスを受けたい」というありがたいお話をいただき、いそいそとお話伺いに行ってまいりました。

今回のご相談者は、名付けて「英語学習こじらせ系」でございます(笑)正直言って英語力かなり高いです。TOEIC 840点。英検準1級。十分じゃないですか。しかし、彼女は言うのです。「肩身が狭い」と。社内には英語ができる人がいっぱいいる。自分は外国人の同僚との雑談もたどたどしく、「留学したのにあのレベル?」と思われたくないから、留学したことを隠しているんだ、と……。

【相談者Bさん】
30代、小学生の女の子と男の子のママ。メーカーの企画部に所属。英語メールのやりとりや電話応対などがごくたまに発生するので対応できるようになりたい。また、外国人の同僚と顔を合わせたときに雑談できるようになりたい。幼稚園時代から英語教室に通い、高校では留学したのに英語を話せない自分に嫌気がさしている。

●英語を学ぶ目的
外国人の同僚と雑談できるようになりたい
英語の電話に対応できるようになりたい
謝罪メールを英語で書けるようになりたい
個人的には、本が好きだから、洋書が読めたらいいなと思う

●いまの英語レベルは?
中上級
英検準1級
TOEIC840点
話すのは苦手

●英語学習歴を教えて?
幼稚園から英語教室に通う(幼稚園〜高校生)
高校生のときに1年間アメリカに交換留学
英文法の講座を受講
リスニングの教材で独学
現在、オンライン英会話を受講中

どんな学習方法がいいなと思ってる?
書いたり読んだりが好き
勉強が好き
メールの書き方に関する参考書を読みたい
大学受験向けの文法問題集ををやってみたい
海外ドラマを英語で見て、フレーズを書き出してみようと思っている
仕事から帰ると疲れ果てているから負担は軽いほうがいい

Bさんは1時間しか時間がないというので急ぎ気味でヒアリングしたのですが、ここまで聞くので40分ぐらいかかってしまいました。なぜなら、Bさんの英語学習歴が幼稚園時代から始まっているものだから、エピソードが長い長い〜! そんなわけで、残り20分で焦り気味でアドバイスさせていただきました。

Advice 1
昔のことは忘れよう……

Bさんの英語学習歴を伺っておりましたら、「幼稚園から高校まで英語教室に通って、高校生のときに留学したけど期待したほど話せるようにならなくて、帰国後に受験勉強でしっかり英語力つけようと思っていたのに推薦で受かっちゃったからその機会も逃して文法が身につかなくて……」そんなBさん的「暗黒の歴史」が語られました。

しかし。それ、すべて20年も前のことなんですねぇ。幼稚園から英語に触れていたこと、高校で交換留学したこと、推薦で大学に入れたこと、どれも間違いなく良いこと。でも、さらに英語力を上げたいという今の目標を後押ししてくれているかというと、足を引っ張っているような。

バイリンガルのお友達には「過去のこと、忘れたほうがいいんじゃない?」って言われたことがあるのだそう。同感でございます。実は私も最近、友達に言ったことがありました。「18年間も英語教材作ってきたのに、どうしてペラペラじゃないんだろう?」って。そしたら「そのプライドを捨てたらいいんじゃないですか?」と。プライド……プライドを持ってるつもりはなかったけど、でも言い得てると思いました。

Bさんには「すでに英語の基礎力があって自分はなんてラッキーなんだ」ということだけを感じて生きていってほしいです(笑)

Advice 2
目標を1つだけにしてみる

いままで散々、英語学習をやってきただけに、英語学習に関する経験も知識も山盛りで、むしろ、こんなにやってきたのに自分の理想とするレベルには到達してなくて、一体これ以上どうすりゃいいの?というBさんのような方、少なくないと思います。名付けて「英語学習こじらせ系」。実は私もその一人。

そういう人は、一度頭をスッキリさせる意味でも、目標をできるだけシンプルに、とりあえず1つだけに絞るところから始めるといいかも(自戒を込めて)。今、一番実現させたいことってなんだろう?

Bさんの目標は「外国人の同僚と英語で雑談したい」「英語での電話対応」「英語での謝罪メール」ですが、いろいろとお話伺ってまいりましたら、英語の電話やメールの謝罪が発生するのは今のところ年に1〜2回。必要に迫られているというわけではありません。

最終的に出てきたお言葉は「てっとりばやく英語ができるという風に見せたいの」。なるほど(笑)それなら「しゃべれるところを見せる」のがてっとりばやいよね。読めるとか聞けるとか、見えないし。というわけで、1つめの目標「外国人の同僚と英語で雑談したい」に向かってまずは邁進して行きましょー。なんか楽しくなってきた。

Advice 3
あれこれ考えずに行動すべし

目標のために役立ちそうなことは、深く考えずにどんどんやってみたらいいと思います。一歩踏み出す前に考えない。経験も知識もあると、新しい教材やサービスを前に、「これ、ほんとに効果あるのかなぁ?」「費用対効果どうだろう? ちょっと高くない?」「この試験受けて意味ある?」などなど考えがち。私もですが。でも、いったん考えるのをやめて、やってみる。合わないなと思ったらやめる。ちょっとぐらいお金が無駄になったっていいじゃないですか。

では最後に、「英語できる風にしゃべる」ための具体的な学習法をご紹介いたします。たぶん、Bさんはすでに知ってることだと思いますが、念のためね。

●ドラマのセリフを完コピ

「英語しゃべれる人だ」と思わせる上でけっこう重要なのが「ネイティブっぽさ」です。相槌、イントネーション、声の出し方、話すスピード、表情、そういった要素を磨くだけで「この人、英語ペラペラなんだ……」というイメージを植え付けることが(?!)できます。

実際、スピーキングテストの判定をしている人が「ネイティブっぽいしゃべり方する人に、うっかり基準より高いスコアをつけちゃうことがある(汗)」と言ってました。

ドラマのセリフはぴったりの教材です。登場人物のセリフを繰り返しシャドーイング(セリフを影のように追いかけながら口に出す)しまくって、自分のセリフとして言えるレベルにしてください。

音声と字幕の英語日本語の切り替えがスマホでも簡単にできるので、英語学習目的なら、Netflixがおすすめですが、好きなドラマでやるのが一番です。

●インタビュー音声を完コピ

YoutubeでもPodcastでも市販の英語教材でもいいですが、自分と同じ性別の人物がインタビューに答えている音声を一つ選んで、そらで言えるぐらいまで練習します。

中学生ぐらいのとき、英語の教科書で、「マーティンルーサーキング」のスピーチを暗記して、スピーチ大会とかやりませんでしたか? あんな感じ。完全に、抑揚もスピードも間もコピーして、なりきって話せるくらいに。スピーカーがちょっと言いよどんだりするところもコピーします。スピーチよりもインタビューのほうが、会話なので雑談に近いです。

教材にできそうな例として、エマ・ストーン様が成功のためのルールについて話している動画をご紹介します。

Emma Stone – Top 10 Rules(約13分)
https://www.youtube.com/watch?v=Guo1zaR1gOA

●子どもに英語で話しかける

英語で話す機会を増やすのに使えるのが、自分の子どもへの話しかけです。まさか、同僚にいきなり”Hi, shall we go to lunch today?”なんて言えないですが、子どもに対してなら気兼ねなく。

たとえば「もうテレビ見るのやめて」とか「宿題やったの?」という利用頻度の高い(涙)セリフを英語で言うようにすると、英会話の練習になります。セリフの英訳には「VoiceTra」という音声翻訳アプリが使えます。

もうテレビ見るのやめて→Stop watching TV anymore.
宿題やったの?→Did you do homework?

と翻訳してくれました。

ちなみにVoiceTraには子どもも興味を持つようで、我が息子たちは「俺にもやらして!」といって寄ってきます。アプリに向かって「うんこ」とか言ってますが……小学生男子にありがちの。いずれにせよ子どもの英語教育にもなって一石二鳥。

VoiceTra
http://voicetra.nict.go.jp/

●オンライン英会話

Bさんはすでにオンライン英会話をやっていて、「自分の話せなさが嫌でやめようとしている」ということなのですが、雑談できるようになりたいなら、リアル雑談の練習はやっぱりやったほうがよい気がする。

オンライン英会話が苦手、嫌だなと思う人は、「フリートーク」を選ばずに、学習プランや教材を指定してレッスンを受けるのがおすすめです。フリートークって、相手との相性もあるし、盛り上がらないのが英語力の問題じゃないこともある。その点、教材があれば、気まずい沈黙や何話そうという気疲れもかなり軽減されます。

慣れるまでは「教材あり」を選んで、慣れてきたら雑談にも挑戦して、ぜひ続けてほしいです。最近仕事で、オンライン英会話の会社をいくつか取材する機会があったのですが、担当者が口を揃えて「TOEICのスコアは高いのに話せないという人ほど、効果が出るのが早い」とおっしゃってました。

●スピーキングテストを受ける

スピーキングのテストって緊張するからか、受けた後、いい感じで気分が上がるんです。前職時代、同僚数人でTOEIC Speaking & Writing Testsを受け(させられ)たのですが、終わった後、自分も含めけっこうみんなハイテンションで「あーだったね、こうだったね」って盛り上がりました。ハードだけど、いい試験だと思います。TSSTも受けたことありますが、電話で受験できてラクだし、いい試験です(高いけど!)。

いま受けて、半年後にまた受けて伸びを確認する、という使い方がおすすめです。

TOEIC Speaking & Writing Tests
https://www.iibc-global.org/toeic/test/sw.html

TSST
https://tsst.alc.co.jp/

「英語学習アドバイス」はじめました

私、うら若き乙女のころ(21歳)からおばさん(39歳)になるまでの18年間ものあいだ、英語教材を作る仕事をしてまいりました。ですので、友達に「ねぇ、どうやったら英語できるようになる?」と聞かれたことは数え切れず。

しかし、毎日毎日あまりにもたくさんの英語学習ネタに触れすぎていたためか、山のような情報がブルドーザーのようにガガガと口に向かって押し寄せて、つまってしまって出てこない。何から伝えたらいいのかわからなかったのです。目の前の人に。

しかし、転職して、英語教材を作りまくる仕事からちょっと離れて1年半。最近、英語学習といい感じに距離ができて、頭が整理されたような気がします。

先日、ママ友に「仕事で英語が必要になったから、アドバイスがほしい」と言われ、「あ、なんか今ならアドバイスできるかも、というかしてみたいかも」と思えたので、勝手に、個人的に、英語学習アドバイザーとしてデビューしました! それがけっこう楽しくて、もしかしたらだれかの役に立つかも、と思ったのでママ友Aさんに許可を得て、こちらでご紹介します。

【相談者Aさん】
30代、女性、小学生男子のママ。来年から美術館の学芸員として働くことが決まっている。2020を前に、外国人観光客も美術館を訪れることが予想されるので、対応できるように英語力を上げておきたい。

Aさんが英語を学ぶ目的

  1. 外国人が美術館に来た時にガイドできるようになりたい
  2. 来日した海外の美術館関係者をアテンドできるようになりたい
  3. アートワークショップを英語できるようになりたい
  4. 海外の美術館関係者からの英文メールに対応できるようになりたい

なるほど、状況は理解しました。なんか楽しそう。なんかちょっとうらやましい。さて、どんなアドバイスをすべきか見極めるため、私からAさんにここでいくつか質問をば。

●いまの英語レベルは?
初級。ハワイ旅行は単語とかフレーズ(go straightとかI canとか)で乗り切った。文法は忘れた

●英語学習歴を教えて?
高校生のときにN●VAに通ったが先生が怖くてすぐやめた
アメリカにホームステイ(高校1年、1カ月くらい)
大学卒業後、貧乏旅行でヨーロッパ大陸を横断

●どんな学習方法がいいなと思ってる?
家でオンラインで学ぶなどをイメージしている
本はあんまり好きじゃない
通学はあまりしたくない。時間がない
飽きっぽい

なるほど。ふむ、いい感じで情報が引き出せたのではないでしょうか。さぁ、いよいよ行きますよ、はじめての、英語学習アドバイス〜!

Advice 1
オリジナルの英文フレーズ集を作るべし

Aさんが英語を学ぶ目的の1〜3については、自分が言うセリフはある程度予想がつくはず。たとえば1なら、「常設展はこちらです」「特別展はこちらです」「写真は禁止です」など。2なら、自己紹介、自分の担当業務の紹介など。3は、ワークショップをリードする説明。なので、それらについては、あらかじめフレーズ集を作って覚えてしまうことをおすすめします。手順は以下のようなイメージ。

1.必要になりそうなセリフを日本語で書き出す
2.翻訳アプリを使うか英語ができる人に聞くなどして英訳し、「オリジナル英文フレーズ集」を作る
3.ロールプレイ形式で口に出して練習しておく
4.実際に業務が始まったら、「これ英語でなんて言うんだろう?」と困った経験をするたびにそのセリフを書き留めておき、あとで英訳してフレーズ集に加えていく。

これを繰り返すうちに、自分が言うべきセリフは英語ですらすら言えるようになるはず。手間はかかるけど。

★お役立ちツール★
Google翻訳→言わずと知れた翻訳アプリ
多言語音声翻訳アプリ ボイストラ→31言語に対応している無料の音声認識翻訳アプリ。フレーズの翻訳に使えるだけでなく、スマホに入れておけばガイドやアテンドのときに翻訳機として使える

Advice 2
アウトプットの場をつくるべし

Advice 1の「オリジナル英文フレーズ集」を覚えるのは「インプット」の作業ですが、必ず「アウトプット」の場をつくっておくことが大事。なぜなら、いつ使うかもわからないフレーズは覚える気にならないから。たとえ月に1回でも英語を話す機会をつくっておくことで、「今度使おう」という気持ちがわいて、インプットの効果が上がります。

というわけで、オンライン英会話が手軽でいいかな。レッスン開始時に講師に「私は来年から学芸員として働くから、そこで役立つフレーズを知りたい」とか「アートについて話したい」とか言えば、講師が合わせてくれるはずです。

★お役立ちツール★
オンライン英会話 ネイティブキャンプ→月額5,950円でレッスン受け放題、予約不要
*オンライン英会話はたくさんあって、どれも良さがあるので好みで選べばいいけれど、仕事があるママのように時間の制約が多い人には「予約なしでスキマ時間にすぐレッスンできる」というのが向いていると思うのでネイティブキャンプをチョイスしました。値段も手頃だし。

Advice 3
コンテンツベースド・ラーニングをするべし

Aさんの場合、英語を使うシチュエーションが「美術館に関する業務」とかなりはっきりしている。そんな場合はぜひ、「コンテンツベースド・ラーニング」をおすすめしたい。

コンテンツベースド・ラーニングとは、手短に言うと「自分が興味がある内容(=コンテンツ)の英文や音声を使う」学習方法。内容自体を楽しめるのでやる気が出るし、自分が使う頻度の高い単語やフレーズをどんぴしゃで無駄なく学べるのがいいところ。

Aさんの場合は、美術に関する英語素材を探すことになります。素材は以下の方法でいくらでも見つかるけれど、自分の英語レベルに合うもの、学習に使いやすいものを見つけるのがわりと難しい。素材探し、そして、素材を使ってどう学習すると効果的か、というあたりはアドバイザーの助けがあるといい部分かもしれません。

★英語素材の探し方★
●仕事で受け取った英文メール→仕事で英語を使うなら、これ以上どんぴしゃな教材はない! 難しい内容でもじっくり1カ月くらいかけて丁寧に読み込む
インターネット上の英文記事→美術関連の記事なら、たとえば、art article、art magazine、picasso、japanese paintingなどの単語で検索すると見つかる
Podcast→Podcastのアプリから、同じように英語の単語で検索して、興味を持てる番組を探す
●YouTube→同上。大学のアート関連レクチャーの動画なんかもあるようです
Netflix→Netflixは、音声の日英や字幕のありなしをスマホでも簡単に設定できるから英語の勉強にいい。「日本語音声×英語字幕」「英語音声×英語字幕」「英語音声×字幕なし」などいろいろ選べます。アート関連番組もあるだろうけど、好きな番組が一番!

Advice 4
文法もやってください

「文法は忘れた」と言うAさん。わかります。いろいろ忘れてます、私も。ただ、文法は文章の土台となる部分なので、やはり意識して強化したほうがいいかな。いまさら文法書を読み直すのもツライよねということで思い出したのが、「文法用語を使わずに、文法を身につけることができる」というシリーズ、『タテ×ヨコ』(アルク)。

実はこれは、仕事で紹介記事を書くことがあって中身をよく知ったのですが、いいと思います。本もアプリもあるのでそこは好みで。私は本、かな〜。Aさんにおすすめしたら、アプリをさっそくダウンロードしてました。

★お役立ちツール★
タテ×ヨコ(アプリ)
タテ×ヨコ(本)

Advice 5
英検2級を目指すといいかも

なにか目標があったほうがやる気が出るし、試験対策をする中で文法なども身につくし、なにより自分の英語力の伸びを客観的に把握できるということで、試験をひとつの目標にするのも悪くないと思います。

これもまた、仕事で英検対策本を担当して知ったことですが、英検ってけっこういい。リーディング、ライティング、リスニングの試験に面接がセットになっているので、試験対策が偏らず、結果として総合力が伸びるという印象がありました。

英文のテーマは、TOEICのようにビジネスシーンに特化しておらず、幅広い。日常会話、スポーツ、健康、自然、IT、など読んで「へぇ〜」と思えるようなものも多いです。Aさんは3級はお持ちということだったので、2級をおすすめしました。そう簡単ではないけれど、合格すれば職場でも「英語できます」という証明にできるし。

★英検のウェブサイト★
英検2級の情報と過去問

……というわけで、だいぶ長くなってしまいました。ひとつひとつのAdviceについて、それぞれまだまだ言いたいことはあるわけですが、とりあえず、1時間ほどで、思いついたことを全部伝える方式で1回目を終えました。全部やることはできないと思うけれど、役立ちそうとか面白そうと感じたものからやってみてもらえればと思っています。

この英語学習アドバイスまつりのあとは、Aさん持ち込みのワインでママ友飲み会がスタート。そっちのほうがずっと長くなり、結局夜の10時半まで語り合ってしまいました。楽しかった。